「子どもや孫に財産を渡したいけれど、贈与税はかかるの?」
「年間110万円までなら贈与税はかからないと聞いたけれど、本当?」
「暦年課税と相続時精算課税は、どちらを選べばいいの?」
このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
贈与税にはいくつかの仕組みがありますが、その基本となるのが「暦年課税(れきねんかぜい)」です。
この記事では、暦年課税の仕組みや年間110万円の基礎控除、贈与税の計算方法、相続時精算課税との違い、注意点について、できるだけわかりやすく解説します。
※この記事は一般的な制度の説明を目的としたもので、個別の税務判断を行うものではありません。具体的な贈与については税理士や税務署などにご確認ください。また制度は改正されているため、2026年時点の制度を前提にしています。
暦年課税とは?
暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与を合計して、贈与税を計算する制度です。
国税庁によると、1年間に2人以上から贈与を受けた場合や、同じ人から複数回に分けて贈与を受けた場合も、その年の贈与額を合計して計算します。
つまり、
- 1月に50万円
- 6月に30万円
- 12月に40万円
というように複数回に分けて贈与を受けた場合でも、年間の合計額は120万円として考えます。
「1回の贈与が110万円以下なら大丈夫」という意味ではない点に注意が必要です。
暦年課税のポイントは「年間110万円の基礎控除」
暦年課税には、年間110万円の基礎控除があります。
1年間に受けた贈与財産の合計額が110万円以下であれば、原則として暦年課税による贈与税はかかりません。
一方、110万円を超えた場合には、
贈与を受けた財産の合計額-110万円=基礎控除後の課税価格
として贈与税を計算します。
例えば年間200万円の贈与を受けた場合
200万円-110万円=90万円
となるため、90万円が贈与税の計算対象となります。
ただし、実際の税額は贈与者と受贈者の関係や受贈者の年齢などによって異なります。
「110万円」は贈与する人ごとではない
暦年課税で特に間違えやすいのが、110万円の基礎控除の考え方です。
たとえば、父から100万円、母から100万円を贈与された場合、
「父から100万円、母から100万円だから、それぞれ110万円以下」
とは考えません。
受贈者がその1年間に受け取った贈与を合計して考えるため、
100万円+100万円=200万円
となります。
したがって、200万円から110万円を差し引いた90万円が、贈与税の計算対象になります。
**110万円は「贈与をする人1人につき110万円」ではなく、原則として「贈与を受ける人1人につき年間110万円」**と考えるとわかりやすいでしょう。
暦年課税の贈与税はどうやって計算する?
暦年課税では、まず1年間に受けた贈与財産の合計額を計算します。
その金額から110万円の基礎控除を差し引き、残った金額に税率をかけて贈与税を計算します。
ただし、税率は一律ではありません。
贈与者と受贈者の関係や、受贈者の年齢などによって、
- 一般税率
- 特例税率
のいずれかを使用します。
特例税率は、一定の要件を満たす場合に、父母や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子や孫などへの贈与に適用されます。
そのため、「贈与額が○万円なら税金はいくら」と単純に判断するのではなく、誰から誰への贈与なのかを確認することが重要です。
暦年課税と相続時精算課税の違い
贈与税について調べていると、「相続時精算課税」という制度も出てきます。
両者には大きな違いがあります。
暦年課税
毎年の贈与について、
年間110万円の基礎控除
を利用し、110万円を超えた部分について贈与税を計算します。
相続時精算課税
一定の条件を満たす場合に選択できる制度で、2024年1月1日以後の贈与については、年間110万円の基礎控除と、累計2,500万円の特別控除があります。
ただし、相続時精算課税を選択した場合、その選択に係る贈与者からの贈与について、後から暦年課税に戻すことはできません。
そのため、「2,500万円まで非課税だから相続時精算課税のほうが得」と単純に考えるのは危険です。
将来の相続まで含めて検討する必要があります。
暦年課税のメリット
暦年課税には、主に次のようなメリットがあります。
1.年間110万円の基礎控除がある
毎年110万円の基礎控除があるため、少額の贈与を計画的に行う場合には利用しやすい制度です。
2.相続時精算課税を選択する必要がない
相続時精算課税とは異なり、特定の贈与者について一度選択すると戻せなくなる仕組みではありません。
3.贈与の状況に応じて柔軟に考えられる
毎年の財産状況や家族の事情を見ながら、贈与する金額を検討できます。
ただし、贈与税だけでなく、将来の相続税まで含めて考えることが大切です。
暦年課税で注意したい「相続前の贈与」
暦年課税を利用する場合、もう一つ重要なのが相続税との関係です。
「年間110万円以下なら、どんな場合でも相続税には関係しない」と考えるのは適切ではありません。
相続税の計算では、一定の期間内に被相続人から贈与を受けた財産について、相続財産に加算するルールがあります。
また、この加算の対象となる期間については、2024年1月1日以後の贈与から段階的な見直しが行われています。
そのため、相続を見据えて贈与を行う場合には、「110万円以内なら絶対に相続税対策になる」と決めつけないことが重要です。
「毎年110万円なら必ず節税できる」は間違い?
よくあるのが、
「毎年110万円ずつ子どもに贈与すれば、必ず相続税対策になる」
という考え方です。
しかし、実際には家族構成や財産額、贈与を行った時期などによって結果が変わります。
さらに、贈与が本当に成立しているかどうかも重要です。
例えば、親が子どもの名義の口座にお金を入れているだけで、子どもがその財産の存在や管理について認識していないようなケースでは、単純に「贈与した」と判断できない可能性があります。
贈与を行う場合は、誰が、誰に、いつ、何を、いくら贈与したのかを明確にしておくことが大切です。
暦年課税を利用するときに確認したいこと
実際に贈与を行う前に、次のポイントを確認しておきましょう。
チェックポイント
- 贈与する人は誰か
- 贈与を受ける人は誰か
- 1年間の贈与額はいくらか
- 他の人からも贈与を受けていないか
- 110万円の基礎控除を超えていないか
- 贈与税の申告が必要か
- 相続時精算課税を選択していないか
- 将来の相続税への影響はないか
- 贈与の事実を記録しているか
特に、複数の親族から贈与を受ける場合は、年間の合計額を把握しておくことが大切です。
暦年課税の贈与税申告はいつ?
暦年課税では、1年間に受けた贈与の合計額が110万円を超えるなど、申告が必要となる場合があります。
贈与税の申告期間は、原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。
ただし、申告が必要となるケースにはさまざまな特例や例外があります。
「110万円を超えたから申告」「110万円以下だから絶対に申告不要」と機械的に判断するのではなく、適用している制度を確認しましょう。
暦年課税と相続時精算課税、どちらがいい?
これは、家族によって答えが異なります。
暦年課税が検討しやすいケース
- 毎年少しずつ贈与したい
- 年間の贈与額が比較的小さい
- 財産を受け取る人が複数いる
- 相続までの期間も考えて計画的に贈与したい
相続時精算課税を検討するケース
- 一定額以上の財産を早めに子や孫へ移したい
- 将来の相続を含めて財産の承継を考えている
- 制度の仕組みを理解したうえで、計画的に利用したい
どちらが有利かは、財産の種類や金額、家族構成、相続税の見込みなどによって変わります。
暦年課税は「110万円だけ覚えればいい」制度ではありません
暦年課税については、
「年間110万円までは贈与税がかからない」
という部分だけが知られがちです。
しかし、実際には、
- 1年間の贈与額を合計する
- 110万円の基礎控除を差し引く
- 贈与者と受贈者の関係を確認する
- 適用税率を確認する
- 必要に応じて贈与税を申告する
- 相続税との関係も確認する
というように、いくつかのポイントがあります。
特に近年は贈与税・相続税の制度が見直されているため、昔聞いた「110万円までなら大丈夫」という知識だけで判断しないことが重要です。
まとめ|暦年課税は贈与を考えるうえで基本となる制度
暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与を合計して贈与税を計算する仕組みです。
基本となるポイントは、
「年間110万円の基礎控除」
です。
ただし、110万円は「贈与する人1人ごと」ではなく、原則として受贈者が1年間に受けた贈与全体について考えます。
また、相続時精算課税との違いや、相続税への影響も考慮する必要があります。
贈与は一度実行すると取り消しや修正が難しくなるケースもあるため、まとまった財産を贈与する場合や相続対策として贈与を検討している場合には、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
「贈与税」「暦年課税」「110万円」「相続時精算課税」について正しく理解し、自分の家族に合った財産の渡し方を考えることが大切です。
※税制は改正されることがあります。この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断については税理士・税務署等への確認をおすすめします。
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贈与は記録を残し、適切に申告することが大切です。制度は改正されることがありますので、最新情報を確認しましょう。