「膵臓がんを早期に発見できる新しい検査方法」に注目が集まっています。
2026年、金沢大学の研究グループが、血液中の遺伝子の働き方を調べることで、ステージ0~1の早期膵臓がんを10例中9例、つまり90%で検出できたという研究結果を発表しました。
膵臓がんは、早い段階では症状が現れにくく、発見が難しいがんの一つです。
今回の研究は、将来的な「膵臓がんの早期発見」につながる可能性があるとして注目されています。
ただし、今回の研究は対象となった早期膵臓がん患者が10人という小規模な研究です。
「血液検査を受ければ膵臓がんを90%発見できるようになった」という意味ではありません。
この記事では、金沢大学の研究で何が分かったのか、従来の検査との違いや、今後期待されることについて分かりやすく解説します。
金沢大学が発表した「膵臓がんを9割検出」の研究とは?
今回の研究では、血液中に存在する遺伝子の「発現パターン」に注目しました。
遺伝子そのものを調べるというより、血液中でどのような遺伝子が、どの程度働いているのかという変化を読み取る方法です。
金沢大学の研究グループは、以前から膵臓がんの患者では、末梢血に含まれる細胞の遺伝子発現パターンに変化が生じることに着目して研究を進めてきました。
今回の研究では、56種類の遺伝子プローブを用いて血液中のmRNAの発現パターンを解析しました。
その結果、ステージ0~1の早期膵臓がん患者10人のうち、9人を検出することができました。
これは90%に相当します。
なぜ「早期膵臓がんの発見」が重要なの?
膵臓がんは、早期発見が難しいことで知られています。
膵臓は身体の奥にあるため、胃カメラなどの一般的な検査だけでは確認しにくく、初期にははっきりした症状が出ない場合もあります。
そのため、症状をきっかけに検査を受けたときには、すでに病気が進行しているケースもあります。
一方、膵臓がんは早い段階で発見できれば、治療の選択肢が広がる可能性があります。
今回の研究でも、金沢大学附属病院の膵臓がん診療において、ステージ0では5年生存率100%、ステージ1では74.4%というデータが示されています。
つまり、膵臓がんでは「できるだけ早く見つけること」が非常に重要だと考えられます。
従来の腫瘍マーカー「CA19-9」と比較すると?
膵臓がんの検査では、血液中の「CA19-9」という腫瘍マーカーが利用されることがあります。
しかし、今回の研究でステージ0~1の膵臓がん10例を調べたところ、CA19-9で検出できたのは1例でした。
一方、56種類の遺伝子発現パターンを利用した方法では9例を検出しました。
| 検査方法 | 早期膵臓がん10例での検出 |
|---|---|
| 遺伝子発現パターン | 9例 |
| CA19-9 | 1例 |
今回の研究では、早期の段階ではCA19-9だけでは見つけにくいケースがある一方、血液中の遺伝子発現の変化を利用することで、別の情報を得られる可能性が示されました。
「膵臓がんを90%発見できる」と考えていい?
ここは注意が必要です。
今回の「90%」という数字は、研究に参加したステージ0~1の膵臓がん患者10人のうち9人を検出できたという結果です。
一般の人を対象にした大規模な健康診断で、膵臓がんを90%発見できることが確認されたわけではありません。
今回の研究は、金沢大学附属病院で行われた小規模なパイロット研究です。
研究では、膵臓がん患者253例の中からステージ0~1の10例を対象として解析し、健常者104人との比較も行われました。
そのため、今後はより多くの人を対象にした研究によって、実際の健康診断や一般的な検診でどの程度の精度が得られるのかを確認する必要があります。
「Panregza」という検査にも注目
今回の研究では、血液中の遺伝子発現パターンに加えて、腫瘍マーカーCA19-9を組み合わせた「Panregza」という診断システムについても検討されています。
今回の研究では、遺伝子発現解析単独では早期膵臓がん10例中9例を検出した一方、Panregzaとして組み合わせた場合の感度は60%、特異度は93.3%でした。
この結果からも、検査方法によって「何を目的に調べるのか」「どの程度の精度が得られるのか」が異なることが分かります。
血液から「がんの存在」を読み取れる可能性
今回の研究で特に興味深いのは、腫瘍そのものを直接調べるのではなく、血液中の遺伝子発現の変化を手がかりにして膵臓がんを検出しようとしている点です。
膵臓がんが非常に小さい段階では、がん細胞そのものを血液から大量に見つけることは簡単ではありません。
しかし、がんの存在によって身体の免疫細胞などに変化が起こり、それが血液中の遺伝子発現に反映される可能性があります。
今回の研究では、CA19-9が正常な早期膵臓がんでも血液中の遺伝子発現の異常が確認されました。
これは、膵臓がんの早期診断を考えるうえで重要な発見の一つです。
膵臓がんの初期症状には何がある?
膵臓がんは、早期には症状がほとんどない場合があります。
ただし、次のような変化がある場合には注意が必要です。
- みぞおちや背中の痛み
- 食欲が落ちた
- 体重が減ってきた
- 黄疸が出た
- 消化不良のような症状が続く
- 糖尿病の状態が急に変化した
これらの症状があったからといって、必ず膵臓がんというわけではありません。
膵臓以外の病気でも同じような症状は起こります。
しかし、症状が続く場合や、気になる変化がある場合には、自己判断で放置せず医療機関に相談することが大切です。
膵臓がんの早期発見には「リスクを知る」ことも大切
膵臓がんの早期発見を考える場合、検査技術だけではなく、自分が膵臓がんのリスクを高める要因を持っているかどうかを知ることも重要です。
たとえば、
- 家族に膵臓がんになった人がいる
- 慢性膵炎がある
- 膵嚢胞などを指摘されている
- 糖尿病がある
- 喫煙習慣がある
などの場合は、医師に相談しながら適切な検査を検討することが大切です。
特に家族歴や膵臓の異常を指摘されている場合には、「症状がないから大丈夫」と自己判断しないことが重要です。
今回の研究から分かったこと
今回の金沢大学の研究を簡単にまとめると、次のようになります。
① 血液中の遺伝子発現を調べた
56種類の遺伝子プローブを利用して、血液中のmRNAの発現パターンを解析しました。
② 早期膵臓がん10例中9例を検出
ステージ0~1の患者10人のうち9人を検出し、90%という結果になりました。
③ CA19-9では10例中1例
同じ10例についてCA19-9で検出できたのは1例でした。
④ まだ研究段階
対象者が少ないパイロット研究であり、一般の人を対象とした膵臓がん検診として「90%検出できる」と判断する段階ではありません。
⑤ 将来の早期発見につながる可能性
血液から得られる遺伝子発現の変化を利用することで、従来の腫瘍マーカーだけでは見つけにくかった早期膵臓がんを発見できる可能性が示されました。
まとめ|膵臓がんの「早期発見」に向けた大きな一歩
今回、金沢大学の研究グループが発表したのは、血液中の56種類の遺伝子発現パターンを調べることで、ステージ0~1の早期膵臓がん10例のうち9例を検出したという研究成果です。
膵臓がんは早期発見が難しい一方、早い段階で発見できれば治療によって長期生存が期待できる可能性があります。
そのため、血液を使って膵臓がんの早期発見につながる可能性を示した今回の研究は、今後の検査技術を考えるうえで注目すべき成果といえるでしょう。
ただし、現時点では「血液検査で膵臓がんを90%発見できる」と一般化することはできません。
今後、より多くの人を対象とした研究や検証が進み、早期膵臓がんを簡単かつ高精度に発見できる検査として確立されることが期待されます。
膵臓がんについて不安がある場合は、症状の有無だけで判断せず、年齢や家族歴、既往歴なども含めて医療機関に相談することが大切です。
参考情報
金沢大学の研究成果および論文「Pilot validation of a whole-blood mRNA expression-based diagnostic system for early-stage pancreatic ductal adenocarcinoma」は、2026年7月に『Scientific Reports』に掲載されています。
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