早期胃がんの治療では、胃を大きく切除せず、内視鏡を使って病変を取り除く治療が行われることがあります。
これまで、特に「未分化型」と呼ばれるタイプの早期胃がんでは、治療後の長期的な経過について慎重に考える必要があるとされてきました。
そんな中、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)などによる研究で、未分化型の早期胃がんに対して内視鏡治療を受けた患者さんを10年間追跡した結果、10年生存割合が96.2%だったことが報告されました。
今回は、この研究結果が何を意味するのか、早期胃がんの内視鏡治療とはどのような治療なのかを、一般の方にも分かりやすく解説します。
10年間の追跡で「10年生存割合96.2%」
今回の研究では、未分化型の早期胃がんに対して内視鏡治療を受けた275人を対象に、長期間にわたって経過が調べられました。
その結果、
- 10年生存割合:96.2%
- 10年無再発生存割合:95.7%
という結果が示されました。
特に注目されるのが、5年を超えた後に再発するケースが非常に少なかったという点です。
がんの治療では、治療直後だけでなく、何年も経過した後の再発や新たながんの発生などを確認することが重要です。
今回のように10年間という長期間の経過を調べたことで、未分化型早期胃がんに対する内視鏡治療について、より長期的な見通しを考えるためのデータが得られたといえます。
そもそも「早期胃がん」とは?
胃がんは、胃の粘膜などに発生するがんです。
胃がんの「早期」「進行」という分類は、単純にがんの大きさだけで決まるわけではありません。
重要なのが、がんが胃の壁のどの深さまで入り込んでいるかという「深達度」です。
胃の壁は内側から、
- 粘膜
- 粘膜下層
- 固有筋層
- 漿膜
などの層から構成されています。
一般に、がんが比較的浅いところにとどまっているものが「早期胃がん」と呼ばれます。
早期の段階で発見できれば、内視鏡を使った治療が選択肢になる場合があります。
内視鏡治療「ESD」とは?
早期胃がんの内視鏡治療で代表的なのが、**ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)**です。
ESDでは、口から内視鏡を胃の中に入れ、胃の内部を確認しながら、がんのある部分を切除します。
お腹を大きく切開して胃を切除する手術とは異なり、体への負担を抑えられることが大きな特徴です。
日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の胃がん治療開発マップでも、一定の条件を満たす早期胃がんに対するESDが治療選択肢として示されています。
ただし、「胃がんならすべて内視鏡治療ができる」というわけではありません。
がんの大きさや深さ、潰瘍の有無、組織型、リンパ管・血管への浸潤など、さまざまな条件を総合的に判断して治療方法が決められます。
「未分化型胃がん」とは?
胃がんは、顕微鏡で見たがん細胞の特徴などによって「分化型」「未分化型」などに分類されます。
未分化型胃がんは、正常な胃の組織に似た構造が少ないタイプです。
このタイプでは、がんが周囲へ広がったり、リンパ節へ転移したりする可能性を考慮する必要があります。
そのため、早期胃がんであっても、内視鏡治療を行う場合には、適応となる条件を慎重に確認する必要があります。
今回の研究が注目された背景には、こうした未分化型胃がんについて、内視鏡治療後の長期的な経過を確認できたことがあります。
なぜ「10年」という期間が重要なの?
がんの治療効果を評価するとき、「5年生存」という数字がよく使われます。
しかし、5年間再発がなかったからといって、その後の経過を完全に無視できるわけではありません。
特に、治療後の長期的な安全性については、できるだけ長い期間にわたって患者さんを追跡することが重要です。
今回の研究では10年間の経過が確認され、5年を超えてからの再発は非常に少なかったことが示されました。
そのため、未分化型の早期胃がんに対する内視鏡治療について、長期的な予後を考えるうえで重要な資料の一つになると考えられます。
10年生存割合96.2%=「誰でも安心」ではない
ここで注意したいのが、「10年生存割合96.2%」という数字の意味です。
これは、今回の研究対象となった患者さんの集団において得られた結果です。
そのため、
「早期胃がんなら10年生存率は96.2%になる」
「未分化型でも必ず内視鏡治療だけで治る」
という意味ではありません。
胃がんの治療結果は、がんの大きさや深さ、組織型、リンパ節転移の有無、切除の状態などによって変わります。
また、内視鏡治療を受けた後の病理検査で、追加の治療が必要と判断される場合もあります。
したがって、研究結果の数字だけを自分自身の治療結果に当てはめるのではなく、担当医から説明を受けることが大切です。
胃がんは「早期発見」が重要
今回の研究から改めて考えたいのが、胃がんの早期発見の重要性です。
胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどない場合があります。
「胃が痛くないから大丈夫」と考えるのではなく、年齢やリスクなどに応じて、胃がん検診や医療機関での検査を受けることが大切です。
特に、胃の症状が続いている場合や、検診で精密検査を勧められた場合には、そのままにせず医療機関に相談しましょう。
内視鏡治療にはどんなメリットがある?
ESDなどの内視鏡治療には、胃を大きく切除する外科手術と比較して、一般的に身体への負担を抑えられるというメリットがあります。
胃を温存できる可能性があるため、食生活などへの影響を抑えられることも期待されます。
一方で、すべての早期胃がんが内視鏡治療の対象になるわけではありません。
「内視鏡で取れるかどうか」は、検査結果をもとに専門医が判断します。
今回の研究から分かること
今回の長期追跡研究で重要なのは、単に「96.2%」という数字だけではありません。
ポイントをまとめると、
① 未分化型の早期胃がんでも内視鏡治療について長期的なデータが得られた
② 275人を10年間追跡した研究である
③ 10年生存割合は96.2%だった
④ 10年無再発生存割合は95.7%だった
⑤ 5年を超えてからの再発は非常に少なかった
という点です。
JCOGは、新しい治療法などを科学的に検証し、患者さんに推奨できる標準治療を確立することを目的として研究を行っている組織です。
今回のような長期追跡の研究は、早期胃がんの治療方法を考えるうえで重要な医学的情報の一つといえるでしょう。
まとめ|早期胃がんは「早く見つけること」が大切
未分化型の早期胃がんに対する内視鏡治療について、10年間の長期追跡によって良好な経過が確認されたことは、患者さんにとって重要な情報です。
10年生存割合は96.2%、10年無再発生存割合は95.7%でした。
ただし、この数字をすべての胃がん患者さんにそのまま当てはめることはできません。
胃がんの治療では、がんの種類や進行度、病変の大きさなどを詳しく調べたうえで、一人ひとりに適した治療方法を選択することが大切です。
そして何より重要なのは、胃がんをできるだけ早い段階で発見することです。
検診や内視鏡検査で異常を指摘された場合は、症状がなくても放置せず、医療機関で詳しい検査を受けるようにしましょう。
※この記事は、胃がんや内視鏡治療について一般的な情報を紹介するものであり、特定の治療を推奨するものではありません。治療方法については、検査結果をもとに担当医へご相談ください。
参考情報
日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、胃がんを含むさまざまながんについて臨床研究を行い、研究結果を公開しています。
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